ナチュラルランニングとは、足が素早く反応し、中足部で着地し、重力を推進力に変えて自然に前に進む走り方です。
サルミングの願いは、ランナーに、自然に、そして怪我なく走ってもらうことです。そのために、まず私たちはランニングテクニックとフォームに注目し、 そしてナチュラルランニングを実現するためのシューズを開発しました。
みなさんがテニスやゴルフを始める時、上手なスイングやサーブを身につけるために、プロからレッスンを受けるかもしれません。 しかしランニングに関しては、多くの人が怪我をしない効果的な走り方を自然と想像できるでしょう。 もし芝生やビーチであれば、シューズを脱いで走るでしょう。しかし、そのような環境はまれです。
ほとんどの場合、ランナーはよくあるランニングシューズを履き、アスファルトやコンクリートの硬い路面の上を走っています。 これが危険を伴います。事実40~65%のランナーが、少なくとも年に1回はケガをしているという調査結果が出ています。
もしもランニングが人間の生活の一部で、人類の自然な動きであり、200万年もの間ずっと続けてられてきたのであれば、 なぜ多くの人たちは走ることでケガをしてしまうのでしょうか?
ランニングが複雑になり始めたのは「モダン」ランニングシューズが開発された40数年前からです。 シューズはクッション性、新しいクッションテクノロジーを次第に組み込んでいき、かかとの位置がつま先よりもどんどん高くなっていきました。
そして、高くなったかかとを使いこなすための、新しいランニングテクニックが生まれます。
ランナーはかかとから地面に着地(ヒールストライク)します。かかとへの衝撃は痛みを発生させ、その結果、よりかかとへの衝撃を和らげるためのクッションテクノロジーが必要となります。
さらには、ヒールストライクで走るとストライドが長くなる傾向(オーバーストライド)があります。
オーバーストライドのデメリットとして代表的なものには、
1)重力に反して走り、すべてのストライドでブレーキが働く
2)ケガをする可能性が高くなる(ヒザやおしりなどの下肢への余分な負荷が増す)
の二つがあります。
そして、「モダン」ランニングシューズとヒールストライクの話はこれだけではないのです。 もしランナーが中足部で着地すると足首はロックされ安定しますが、ヒールストライク時は足首が緩んだ状態になります。 その結果、ヒールストライクの場合、ランナーはより頻繁に足首を回内、回外することになります。
この問題に対するシューズ業界の答えは、モーションコントロールシューズの開発でした。 過去20年に渡る「モダン」フットウエアの主眼は、足を自然な歩行運動に導くことで、これがより疲れにくく、ケガを防ぐ方法であると考えられていました。 しかし、すでに不自然な形に進んだ「モダン」ランニングシューズを改善するための機械的解決策は役立ちませんでした。 「モダン」ランニングシューズが提唱する新テクノロジーでも、ケガの発生率を改善することはできていないのです。
シューズ業界はウォーキングとナチュラルランニングの歩行運動を混同し、 ウォーキングの歩行周期をベースにシューズを作成したのです。 ランナーたちはロー、ミディアム、ハイアーチなど、足の形を元にシューズを買うように勧められました。 皮肉にも、今日量販店で販売されている多くのランニングシューズは、ウォーキングに適したものです。
多くのランナーが気づいていないのは、足の形や故障歴からシューズを選ぶ方法は、根拠となる研究結果がないということです。 アーチタイプでシューズを選ぶことは時代遅れです。
リサーチに基づいた新しいアプローチによれば、ケガの予防はランニングテクニック/フォーム分析が必要であることが徐々に明らかになっています。 例えばナチュラルランニングのような正しいテクニックによって、約50%までケガの発生率を下げられることが明らかになっています。
こうした新しいアプローチのランニングシューズによって、正しいランニングテクニックを身につけることができるはずです。 サルミングはランニングシューズを開発する際、「5つのルール」を基本としています。古いランニングシューズは、 ランナーをランニングの歩行周期ではなく、ウォーキングの歩行周期へと導いています。。
サルミングのナチュラルランニングシューズは、正しいランニングテクニック/フォームを身につけることができるように設計されています。
私たちは「5つのルール」を基にシューズを開発しています。
身体の軸を正しく置くことは、良い姿勢で走るための基本です。
疲れた時、姿勢が前かがみにならないようにします。操り人形のように糸で吊るされていると思って下さい。姿勢を伸ばし、力強く走ります。
足の接地位置はランニング効率、長期的なケガ予防、走る楽しさという点で非常に重要になります。
身体の重心下に中足部で接地することにより、ランニング効率を最大限に高め、さらに足の安定性を生みます。 安定性は身体の軸がしっかりしている証明であり、それはケガを減らすことにつながります。 ヒールストライクによって起こる衝撃、オーバーストライド、ヒザの不安定性などマイナスとなる要素を避けなければなりません。
正しい接地場所を確認したい場合、「ランアップ」(その場走り)をしてみましょう。 かかとやつま先ではなく、まず拇指球で接地し、その後足全体を接地させます。
1キロメートル当たりおよそ1000ステップを重ねます。そのすべてステップで、体重の約3倍の負荷がかかります。 その結果、足の接地時において間違った動きがあれば、長期のランニングを経て、健康に大きな影響を及ぼすことになります。
世の中に「タダ」はありません。すべてにおいて代償があります。しかし、幸運にもランニングにおいてはタダで活用できる力があるのです。 力を最も活用できる角度へ身体を傾けるだけでいいのです。 身体を前に倒し、重力によって前に倒れようとする動きをランニングの力に変換するのです。
ウエストから曲げるのではなく、足首から全身を傾けるようにします。「フリーエナジー」(無料のエネルギー)である重力をランニングに活用することで、 より効果的にそして以前よりも楽に走ることができます。
正しいランニングテクニックを身に着けるために必要なものに、ケイデンス(足の回転率)があります。 短くて速いストライドは抵抗と衝撃が少なく、身体の筋肉に対してやさしく、効率的な走り方になります。
ストライド幅を前方でなく後方へ伸ばすのは、腰部の可動域を増やす意味もあります。
回転率はアップヒル、ダウンヒル、クロスカントリーランニングにおいても、走りを改善するための鍵になります。
「ゲイト」とは人間の歩行について説明するための医学用語で、2つのフェーズがあります。1)スタンスフェーズ - 足が地面に接している時間。 2)スウィングフェーズ - 足が地面に接していない時間。以下ではスタンスフェーズ(いつ、どのように足が地面に接するか)について着目していきます。
ウォーキングゲイトはかかとが身体の前方で地面に接するところがから始まります。 そして中間姿勢へと進み、最後につま先が地面から離れるプロポーションフェーズ(推進フェーズ)へと進みます。
この動きはウォーキングに対してはとても効率的です。それゆえにウォーキングゲイトと呼ばれているのです。 注意すべきは、アキレス腱や殿筋のようにランニングで使われるすべての筋肉が関係しているわけではないという点です。
ウォーキングゲイト(ヒールストライク)でランニングすることにはマイナス面があるのです。例えば
ランニングゲイトは重心下に中足部/拇指球で地面に接するところから始まります。 そして可能な限り素早く足全体を下へ運びます。地面と接する時間を少なくすることにフォーカスし、 重心下で接地することでエネルギーのロスを最小限にします。 これにより、蹴り出す代わりに脚を上げることで新しいストライドが生まれ、素早く足を回転させ、少ない衝撃で、 少ない回転力と力で走ることができます。
身体の自然なクッションやバネの力をフルに使えるという利点もあります。
中足部または拇指球で接地する場合のデメリットはありません。 このページを読み、サルミングランニングアカデミーを見て、ランニング技術を実践するだけでいいのです。 それによってランニング効率が改善し、健康的に楽しく走れるようになるでしょう。
スプリント動作においては、つま先部分で接地が行われ、かかとが地面に接することはありません。 スプリントゲイトはとてもエネルギーを消費し、ふくらはぎの筋肉疲労を引き起こします。 したがって、スプリントゲイトは通常800メートルまでのスプリント時に使われます。
つま先
ハーバード大学人類学のリバーマン教授は次のように述べている。
「人間の身体はランニングに適しています。進化の過程で、走ることに適した短いつま先のような構造的特徴を持つに至りました。
長いつま先は歩く時には問題ありませんが、走る時にはねじれの力により簡単に壊れてしまいます。我々人類に近い種属の動物たちは、
長いつま先をしていますが、人類はそうではありません」
土踏まず
土踏まずはフレキシブルで弾力性があり、26の骨、33の関節、12の腱、18の筋肉から構成されており、
ランニング時にはバネのように伸び縮みします。リバーマン教授によると、走る時に生じる約17%のエナジーは、このバネの部分に蓄えられたり放出されたものです。
足の重量を支える骨が土踏まずです。オックスフォード辞書によると土踏まず(アーチ)は「空間の上で重量を支える湾曲した構造」と定義されています。 つまり、土踏まずを強くするためには、その両端を支える必要があります。かかとと拇指球の間の土踏まずを支持するのであれば、 かかとの骨を地面に対してフラットにすることで、つま先部分の安定性が生まれます。同時に、つま先がフラットになることで、かかと部分の安定性も生まれます。
アキレス腱
かかとの後ろからふくらはぎの筋肉につながる、身体の中で最も大きなバネです。走る時、足が地面から受ける衝撃エネルギーの約35%を蓄えたり、放出したりします。
歩く時には、アキレス腱はさほど使われていません。
大殿筋
大殿筋は大殿筋は殿部と脚をつなげる筋肉で、身体の中で最も大きな筋肉です。歩く時にはさほど使われていませんが、走る時には非常に大切な筋肉で、
身体が前のめりになるのを防ぎ、安定させます。
肩と靭帯
ランニング時、低くて緩んだ状態の肩が身体のバランスを保ち、また重要な靭帯が頭部を安定させています。
リバーマン教授は、これらの構造的特徴により人体が長距離のランニングに適していると考えている。
土踏まず、アキレス腱、適度に曲げたヒザとS字になった背骨は、人体の自然なクッション構造として機能します。 メーカーが宣伝しているクッション素材ではなく、正しいランニングフォームで走ることが、人間に本来備わっている自然なクッション構造を最大限に活用することになるのです。
実は人間の身体には「エナジーリターン」システムが備わっています。アキレス腱やその他の腱は衝撃エネルギーをリサイクルするのです。 足が地面に着く瞬間、衝撃エネルギーは筋肉や腱に蓄えられ、身体を前へ押し出すバネの力として使われます。
このバネの力は広く宣伝されている反発する素材とは全く異なるものです。 実際、クッション性のあるミッドソールは自然な弾性エネルギー/反発エネルギーを吸収してしまいます。 ミッドソールが厚くなればなるほど、エネルギーロスが大きくなってしまうのです。
しかし、ミッドソールが薄く軽量化されたランニングシューズならば、裸足でのランニングよりも効率が良いことが最近の研究で明らかになってきました。 それは裸足で走る時に身体が地面から受ける衝撃を緩和するエネルギーに比べて、(軽量なシューズの場合は)シューズの重みを支えるエネルギーの方が小さいと考えられるからです。
歩行時とランニング時、通常、足に回内と回外が起こります。回内は最適な動きや衝撃吸収に対して非常に重要な動きとなります。 足が地面に着く時、足は内側に回転し土踏まずは平坦になります。 これを回内と呼び、健康な足であればすべてのステップで、特に不整地などの路面に適応できるように足を緩めるために起こる動きなのです。
内回につづいて、回外が起こります。足がわずかに外側に回転し、足は柔軟な状態から、地面を蹴り出すために固い状態へと変わります。
現在、様々な要因により、人間の通常歩行が阻害されています。中でも2つの大きな要因はアンバランスな筋肉と過度にサポートされたシューズを履くことです。
ランナーによって回外したり回内したり、動きが分かれるという考えは単純化し過ぎており、マーケティングのための誇大広告です。誰でも回内、回外をするものです。 過度に回内または回外する理由の多くは、サポートされ過ぎたシューズを履いていることです。 特に子どもたちに対しては注意しなければなりません。
シューズ業界でのモーションコントロールシューズの守備範囲は、問題の根本的原因を解決することではなく、 機能によって症状に対処しているに過ぎません。 私たちの新しいアプローチは、ケガをしないようにランニング技術と姿勢に着目することです。 ナチュラルランニングシューズは、このステージへの移行を後押しするものです。
キーボードをタイプするのにスキーの手袋をする人はいしないでしょう。同じように、 ランニング時にミッドソールの厚いシューズは履かないほうが良いでしょう。 「足は保護される必要がある」という固定概念が間違いの原因です。
拇指球の辺りには足から脳への信号を送るたくさんの感覚器官があります。 そして、脳は瞬時に反応し、身体があらゆる路面に対して適応するのです。 もし、地面と足の間に分厚いミッドソールがあると、この(足と脳の)通信を阻害してしまい、身体が正しいランニング技術を応用しにくくなります。
21世紀に生きる私たちは、いつも裸足で走っているわけでもなく、また柔らかい芝生の上や柔らかい道だけを、快適な気温の中走っているわけではありません。 昔の人々のように足の裏に分厚い皮膚があるわけではないのです。
現代の私たちは砂利道、アスファルトやコンクリートからクロスカントリートレイルなどさまざまな道を走ります。 硬すぎる路面や尖った物、さまざまな路面温度から足を守らなければなりません。その意味で、シューズをはくことは理にかなっているのです。
加えて、適度なクッションのある軽量なシューズは、裸足でのランニングよりも効率的であることが研究で証明されています。 またミッドソールが薄いと、衝撃を吸収するために体力が奪われるという考えもあります。
しかしながら私たちは、下肢の強さやランニング感覚を向上させるためにも、トレーニングの中に裸足でのランニングを取り入れるべきだと考えています。 芝生の上やビーチなど、裸足でのランニングに適した場所を探してみてください。
もし、高いかかとと厚いミッドソールの伝統的なランニングシューズを履き、ヒールストライクで走っているならば、 徐々に改善していくことが大切です。
正しいランニングフォーム&ナチュラルランニングは、特にふくらはぎとアキレス腱を活性化させるため、 ゆっくりと開始し、最初の2週間は普段走っている距離の半分に抑えます。そして次の2~6週間をかけて徐々に距離を増やしていきます。
これまで間違ったタイプのシューズを履き、ヒールストライクで走ってきたのであれば、筋肉は以前のフォームを強く記憶しています。 そのためランニング法を変えるには時間がかかるかもしれません。幸いなことに、効果はすぐに表れます。走る距離にもよりますが、完全に移行するまでには、 6~12カ月ほどかかるかもしれません。以前よりも強い足と下肢の筋肉を使い、効率よく走ることでケガのリスクを減らし、 疲れにくく、そして楽しく走れるようになります。
もしランニングが人間にとって自然な動作であれば、人類の身体はランニングに耐えられるように進化するはずです。 素足で、かつヒールストライクで走れば痛みを生じます。またヒールストライクで走る唯一の方法が、衝撃を緩和するクッションと モーションコントロールテクノロジーが備わった「近代的」シューズを履くことであったなら、 それは人類にとって自然な形でしょうか?